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大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)4555号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二、責任原因<中略>

(二) 使用者責任

請求原因第二二(二)の事実は森の過失を除いて当事者間に争いがない。

<証拠>を綜合すると、本件事故現場は東西に通ずる道路と南北に通ずる道路とが交わる信号機による交通整理の行われている交差点内で、交差点の西側入口手前に幅六メートルの横断歩道があり、交差点の西側の東西道路は南側が工事中で柵が張られていて、その北側の道路の幅は一〇、二メートルであつたこと、森は、加害車を運転して時速約六〇キロメートルで西から東に向つて工事用の柵のすぐ北側を進行中、前方の交差点の信号に十分注意せず、そのままの速度で交差点を直進通過しようとして交差点の西側入口の横断歩道の約三メートル手前まで進行してきたとき、対面信号が既に黄になつているのに気づいて急ブレーキをかけたが及ばず、約二七、八メートル進行して交差点の中心より北側の地点で北向になつて進行中の被害車の左側面に加害車の前部を衝突させたこと、荻野は、被害車を運転して東から西に向つて進行し、青信号に従つて右交差点内に進入し、北に向つて右折するため、交差点の中心より少し南側の地点で一時停止して東進する車両の通過を待つていたが、東西方向の信号が黄となり、西から東に向つていた車両が交差点西側入口の横断歩道の手前で二台位並んで停止するのを認めたので発進し、北に向つて時速約一〇キロメートルで進行し、約六、七メートル進行して交差点の中心をこえて北向きに進行中、加害車が横断歩道手前で二列になつて停止中の車両の南側を通り抜けて交差点内に進入してきて衝突したこと、本件事故が発生したときには東西方向の信号は赤になつており、南北方向の信号は青になつていたこと、萩野は、被害車を発進させたときには工事用の柵のため加害車が東進してくるのを認めることはできなかつたことが認められ、証人森庄平の証言中右認定に反する部分は前記甲第一二号証に照らし、たやすく措信し難く、他に右認定を左右しうべき証拠はない。以上の事実によれば、森は、加害車を運転中前方を注視するべき注意義務を怠つたため、前方の信号が黄となつているのに気づくのがおくれ、黄信号に従つて交差点西側入口の横断歩道手前で停止するべき義務を怠つた過失により本件事故を発生させたものと認められる。従つて被告は、森の使用者として原告に対し、物損による損害を賠償するべき義務がある。

三、損害<中略>

(四) 自動車破損による損害

五五〇、〇〇〇円

<証拠>によれば、原告は、自動車の修理を業とする会社であるが、中田からその所有の被害車の整備を依頼され、原告の従業員の荻野が被害車の引渡を受けてこれを原告の工場に移送するため運転中に本件事故が発生し、被害車が破損し、修理不能となつたので、中田に対し、被害車のかわりに新車を引渡すこととし、その購入代金八九四、八〇〇円、登録料五、〇〇〇円、自動車取得税二四、四八〇円、自動車税八、〇〇〇円、保険料二二、四六五円および三六、五〇〇円合計九九一、二四五円を支払つたこと、中田は、被害車を事故の四ケ月位前に購入して事故時までに約四、〇〇〇キロメートル走行していたもので、本件事故当時の被害車の時価は六〇〇、〇〇〇円であり、事故後の被害車の価格は五〇、〇〇〇円であつたことが認められ、右認定を左右しうべき証拠はない。以上の事実によれば、原告は、本件事故により、被害車が破損して修理不能となつたために、被害車の事故当時の価格六〇〇、〇〇〇円から事故後の価格五〇、〇〇〇円を控除した五五〇、〇〇〇円を中田に支払うべき義務を負つたもので、右金額相当の損害を蒙つたものと認められる。原告は、新車の購入に要した費用およびこれに伴う税金、登録料、保険料等の支払をもつて本件事故による損害と主張するけれども、右各費用は中田が中古車である被害車のかわりに新車を取得したことによつて必要となつたものであり、かつ中田にとつては新車を購入してあらたに保険契約をなすことによつて保険期間が延長されるなど事故前より利益を得たことになるのであつて、原告が中田に対して新車を引渡すべき義務があるとはいえないから、本件事故による損害は右諸費用のうち前記の五五〇、〇〇〇円に限られ、これをこえる費用の支出は本件事故と相当因果関係の範囲内の損害と認めることはできない。

(五) 過失相殺

前記二(二)の事実によれば、被害車の運転者の萩野には本件事故発生について過失はなかつたものと認められるから、被告の過失相殺の主張は理由がない。

(山本矩夫)

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